「精進料理」は修行の一環?ヴィーガン食と精進料理の違い

動物性の食材を使わず、野菜類や豆類などの植物性の食材のみで作られることから、ヴィーガンはもとより、健康食として世界から注目を集めている『精進料理』ですが、実は条件次第では肉や魚を食べることができるそうです。そんな、ヴィーガン食と似ているようで少し違う、精進料理についてご紹介いたします。

 精進料理とは

そもそも『精進料理』とは、仏教における戒律に基づいて、修行の一環として行うものであり、「三厭五葷(さんえんごくん)」を使用しない料理のことで、二つの刺激を避ける目的があります。

一つ目、「殺生:生き物を殺すこと」

二つ目、「煩悩:人を苦しめ、煩わせる心」

 つまり、「美食や肉食を避け、粗食や菜食によって精神修養をする」ということです。このことから「三厭:さんえん」と呼ばれる【獣・鳥・魚】のほか、これらの加工品(※)であるチーズや牛乳、卵などを使用しない、植物性食材[野菜類・穀類・海藻類・豆類・木の実・果実など]がメインの精進料理が作られるようになりました。

さらに、植物性食材の中でも「五葷:ごくん ※」と呼ばれる【ネギ・ニンニク・ニラ・タマネギ・ラッキョウ】は、香りや刺激が強く、精がついて性欲を刺激し、修行の妨げになるということから禁止されています。

 ※三厭の卵や牛乳などの扱いや、何を五葷とするかは、その時代や地域によって異なります。そのため、五葷に山椒や生姜、ノビルやパクチーなどが含まれることもあるそうです。

 また、精進料理の特徴としては、美食を避けることから調味料を極力抑えて素材の味を生かした料理や、基本的には火を通して調理したものを食べます。仏教が広まった当時は、現代のサラダのように生のまま食べるという習慣がなかったことに加え、精進料理でよく用いられる山菜を使った料理では、加熱によるアク抜きや水煮といった下処理が必要だったということにも由来するようです。

 五葷の制限は、通常のヴィーガンよりも厳しい制限と言えますが、地域によっては五葷(ごくん)を食べないオリエンタルヴィーガン(またはオリエンタルベジタリアン)と呼ばれる人たちも存在します。主にインドやアジアの地域に多いと言われており、これには仏教といった宗教上の理由が背景にあると考えられています。 

三厭五葷 獣・鳥・魚・ネギ・ニンニク・ニラ・タマネギ・ラッキョウ
精進料理なのに肉や魚が食べられる?

先ほどお伝えしましたが、殺生を行うことから修行僧が食べてはいけない食材に肉や魚がありますが、実は、条件次第では食べることができるそうです。

托鉢僧

 それは、「三種の浄肉」と言って、主に修行中の僧侶が托鉢の際に、お布施として余り物の食材をいただいた場合に許されるそうです。

 【肉や魚を食べることができる三つの条件】

・僧侶が(肉を)殺すところを見ていない

・僧侶のために殺したとは聞いていない

・僧侶のために殺したとは知らない

 基本的には肉や魚を食べませんが、お布施として余り物を頂くのに、肉や魚はダメですと言うルールの押し付けは、相手を否定することになってよくない、という考えがあるからです。これら三つの条件を満たしていれば精進料理でも肉や魚を食することもできるため、精進料理がヴィーガンの一種とは言い切れないのです。

お坊さんの努力がもたらした料理の数々

精進料理は植物性食材がメインの料理であるため、どうしても栄養に偏りがあったため、良質なたんぱく質を含む大豆に注目が集まりました。特に大豆は生で食べることができないため、調理方法を工夫して加工する技術は、仏教の影響を受けた精進料理の普及とともに発達してゆき、現在の日本料理には欠かせない、多くの大豆加工品も生み出されました。

精進料理と共に普及した主な大豆加工品

 また、私たち日本人が普段「出汁」と言えば、かつお節と昆布を使ったものを想像しますが、精進料理ではかつお節を使用できないため、「精進出汁」と言われる昆布や椎茸、大豆やかんぴょうを使った出汁のことを指します。出汁よりも手間と時間がかかる精進出汁は、食材と真摯に向かい合うという意味で、修行の一つでもあります。このほか、代表的な精進料理として、季節の食材を使用した煮物や精進揚げ、胡麻豆腐、がんもどきやけんちん汁などがあります。

 そして、これらを使った保存が効いて味も良い料理が、修行僧から一般庶民へと普及していったのです。

てんぷらと精進揚げの違い

 けんちん汁の名前の由来

ヴィーガンと精進料理の違いは?

精進料理は、「仏教における修行の一環」であり、悟りを開いて仏に近づくために、殺生をせず、煩悩を払うための手段の一つです。

 一方のヴィーガンは、「人間が生きるために動物を傷つけ、搾取することは悪いこと」という考えのもと、生活をしているのです。

 このように考え方や目的に大きな違いがありますが、私たちが「料理として食べる」ことだけに注目してみると、動物性食材を避けることからヴィーガンと精進料理には共通点があると言えます。

 ※出汁や料理として肉や魚が使用される場合もあるため、ヴィーガンの方と精進料理のお店に行くときには、念のため、お店に確認をしてください。

さいごに

現在、精進料理は四季折々の旬の食材を楽しめる健康食としても注目が高まっています。ヴィーガンに馴染みが無い方へは、食事として食べるだけなら日本古来の精進料理とさほど変わらないことを伝えてはいかがでしょうか。

厳しい生活を送っていた修行僧にもあった、食べることへの欲求。いつの時代でも、昨今のような外出がままならないような生活をしていても、笑顔で食卓を囲み、食事ができることを楽しみたいですね。